神経根の圧迫

椎体C4/C5の神経根C5では、三角筋・上腕二頭筋、椎体C5/6の神経根C6では、上腕二頭筋・手指伸筋、椎体C6/7の神経根C7では、上腕三頭筋・手指屈筋・指伸筋が、筋力低下、筋萎縮を示し、深部腱反射は低下もしくは消失します。

椎体C7/8の神経根C8 では掌内固有小筋・指屈筋が、椎体T1/T2の神経根T1では掌内固有小筋が、筋力低下、筋萎縮を示します。

 

神経根の圧迫所見がMRIで確認され、これが外傷性所見と判断、画像所見に一致する神経学的異常所見(スパーリング、ジャクソンで+)が確認された時には、12級13号が認定されます。

  椎体2

神経根

C5

C6

C7

C8

椎体

C4/C5

C5/6

C6/7

C7/8

痺れ

上腕

親指

人差し指

中指

薬指

小指

神経根

L4

L5

S1

椎体

L3/L4

L4/L5

L5/S1

痺れ

大腿の内側から下腿内側上部

下腿外側から母趾・第2趾にかけて

第4趾

第5趾

足底部

 

受傷から2ヶ月以内の頚部MRIの重要性

受傷から2カ月以内の頚部MRIで、C5/6/7のいずれかの神経根に浮腫を複数例、確認できることがあります。つまり、神経根が挟み付けられ、腫れ上がっているのです。

多少の年齢変性があっても、神経根に浮腫が認められれば、これは明確な外傷性所見です。

ただし、受傷から2カ月以内のMRIでないと、浮腫の確認はできないのです。

 

12級13号と14級9号

神経根の圧迫所見がMRIで確認され、これが外傷性所見と判断、画像所見に一致する神経学的異常所見が確認された時には、12級13号が認定されます。

MRIで確認されなくても、針筋電図検査で支配領域の上肢に神経原性の麻痺が確認できれば、12級13号が認定されます。神経原性麻痺は他覚的所見と判断されているのです。

 

圧迫所見が画像で確認されても、外傷性所見ではなく、年齢変性と判断されたときには、14級9号となります。

 

画像所見、針筋電図検査で異常所見が得られていなくても、自覚症状と頚部神経学的所見が神経根症に一致していれば、14級9号が認定されています。

 

中心性脊髄損傷との区別

(1)むち打ちとは異なること!!

中心性脊髄損傷は、脊髄損傷であり、外傷性頚・腰部症候群(TCS)の範疇に含まれません。

(2)中心性「()()」損傷の特徴

ア 非骨傷性頚髄損傷

脊髄損傷の1つである中心性頚髄損傷の大きな特徴は、頚椎の骨折を伴わない、非骨傷性頚髄損傷であることです。

イ 発症の基盤に変形性脊椎症、脊柱管狭窄症があること

また、発症の基盤に,頸椎症や頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)などに伴う脊柱管狭窄が存在していることが多く、中年以降の被害者に比較的軽微な受傷機転で発症することが多いのを特徴としています。

ウ 症状(上肢の運動麻痺、痛み、痺れ)

中心性脊髄損傷は、脊髄の灰白室と白室内側部の損傷であり、「頚髄」損傷では受傷直後にみられる下肢・膀胱直腸機能の障害が速やかに軽減し、上肢優位の障害(手指の巧緻運動障害つ強い痺れ)を呈します。

上肢の症状が、下肢よりも強く出現するのです。

具体的な症状としては、運動麻痺、痛み、ビリビリするような両手や手指の痺れです。

タンスの角で腕をぶつけたとき、電気が走るような痺れを経験されたことがありますか?こんな痺れが、常時、両上肢に発生していれば、頚髄中心性損傷が疑われます。

(脊髄断面図)

脊髄

 参考(頚髄、胸髄、腰髄、仙髄)

脊髄には、頚髄、胸髄、腰髄、仙髄が通っています。

首のところで枝分かれした神経 (頚髄神経) は後頭部・首、腕、手指へ、胸の部分から枝分かれした神経 (胸髄神経)が胴体へ、腰から枝分かれした神経 (腰髄神経) は下腹やおしり、足の前側へ伸び、背骨の末端 (仙骨)まできた神経 (仙髄神経) は膀胱や陰部、足の裏側に至ります。

神経症状は、圧迫される場所によって異なります。

首の部分で脊髄そのものが圧迫されると、手の動きがぎこちなくなったり、歩行時にふらついたりし、手足両方の筋力低下や排尿障害があらわれます。(頚椎症性脊髄症)。脊髄から枝分かれした部分(神経根)が圧迫されると、首~肩~手にかけた神経症状があらわれます。

 

(3)中心性頚髄損傷を裏付ける画像

脊髄画像

左がT1強調画像で、C4からC4/5椎間高位に中軟化型損傷が確認できます。

右はT2強調画像で、軟化巣は、高輝度変化として確認することができます。

T1強調画像とは、体内の脂肪分を強調して撮影する方法で、椎間板の突出や出血の状態を確認するのに有意な撮影方法です。

全体的に黒っぽく、コントラストがハッキリしているものが、T1強調画像です。

T2強調画像は、体内の水分を強調して撮影する方法で、髄液や膀胱内の状態を確認するのに有意な撮影法と説明されています。

全体的に白っぽくぼやけているような印象がT2強調画像となります。

Nliro調査事務所は、MRIのT2強調画像で高輝度が認められることを、認定の要件としています。

ただし、この画像所見が確認できるのは、受傷後の急性期に限定されます。

慢性期にはT1強調画像で軟化型損傷を発見、立証する必要があります。

脊髄損傷であれば、非可逆性ですから、重傷例では、改善は認められません。

上肢の麻痺症状が顕著なときは、脊髄損傷として後遺障害等級の対象となります。

例えば、両上肢において、文字を書くことに困難を伴う場合は、「軽度の麻痺」として5級2号が認定されます。

 

バレ・リュー症候群

バレ・リュー症候群は、後遺障害の対象となる症状ではありません。

理由は、ペインクリニックにおける交感神経ブロックで改善が得られるからです。

しかし、バレ・リュー症状の1つである耳鳴りは、30dB以上の難聴を伴っていれば、12級相当です。

耳鼻科を受診し、オージオグラム検査を受けなければなりません。

30dBに達しないときは、バレ・リュー症候群ですから、後遺障害を諦めざるを得ません。

 

胸郭出口症候群

胸郭出口症候群の症状は、「手や腕のしびれや違和感」を呈する自覚症状がありますが、腕神経叢もしくは、鎖骨の下の血管が圧迫を受けることによって起こります。

裁判では、血管造影撮影で圧迫所見が立証されていれば、直近の判例でも、12級13号が認定されています。

 

低髄液圧症候群=脳脊髄液減少症= CSFH

脳脊髄液減少症の研究については、平成19年度から厚生労働科学研究費補助金において、研究が実施されています。

そして、2012年10月2日、脳脊髄液漏出症の画像判定基準・画像診断基準が公表されました。

これには、以下のように記載されています。

「『脳脊髄減少症』という病名が普及しつつあるが、現実に脳脊髄液の量を計測できる方法はない。脳脊髄液が減少する病態が存在することは是認できるとしても、現時点ではあくまでも推論である。画像診断では、「低髄液圧」、「脳脊髄液漏出」、「RI循環不全」を診断できるにすぎない。

以上のような理由で、今回は『脳脊髄減少症』ではなく『脳脊髄漏出症』の画像判定基準・画像診断基準とした。

一方、硬膜肥厚に代表される頭部MRIの所見は、『低髄液圧』の間接所見であるが、『脳脊髄液漏出症』と『低髄液圧症』は密接に関係しており、『低随液圧症』の診断は『脳脊髄液漏出症』の補助診断として有用である。そのため、『低髄液症』の画像判定基準と『低髄液圧症』の診断基準を別に定め、参考として掲載した。」

このように、現時点では、「脳脊髄()()症」ではなく「脳脊髄()()症」の画像判定基準・画像診断基準が定められているにすぎません。

そして、「低髄液症」の画像判定基準と「低髄液圧症」の診断基準が別に定められていますが、あくまでも「脳脊髄液漏出症」の補助診断として有用であるという位置付けです。

したがって、現時点では、「脳脊髄()()症」の認定を目指さざるを得ない状況です。